先週のエリック面白かったあ。特に道重さんの表情。

こんばんは、T君。お仕事は相変わらず忙しいですか? トロンボーンはちゃんと吹いてる?

さて、今日取り上げるのはモーニング娘。の「シャボン玉」という曲。
この曲は2003年7月30日に発売されたシングル曲です。第6期メンバー(亀井絵里道重さゆみ田中れいなそして藤本美貴)が加入しての第一弾シングル。当時新人の田中さんがフロントメインとして異例な抜擢を受けたことでも話題になりました。そこで今回はこの曲を軸にモーニング娘。ひいてはハロプロのコンサートでの私なりのポイントをT君にささげたいと思います。聴き所が絞れないとどんなコンサートもよくわからないまま時間ばかりが無為に流れてしまいます。そんな事態を避けるために、まずはここを聴くんだというポイントをつかんでほしいのです。
あなたはよく「モー娘。って人数が多すぎてごちゃごちゃしてよくわかんない」とか「同じコンサートなのになんで何回も見に行くのか」とか「コンサート会場に集まるファンの雰囲気が怖い」とか仰っています。そんな疑問を解消するための一助にこの作文が貢献できれば、これほどの幸せはありません。

さて、それではまず「シングルV シャボン玉」をDVDトレイに入れてください。
ところでシングルVというのは、CDシングルのPV版とでもいうべきものです。ここでまず見ていただきたいのは、チャプター2の唄え! シャボン玉バージョンです。この唄え! シャボン玉バージョン、何だか顔のアップばかりで面白くない映像だなとお思いかもしれません。しかし、このバージョンのいいところはそのパートを歌っている人をほぼ確実に映してくれるところなのです。(一部飯田さんが映っていない編集ミス(?)がありますが)まずは、この映像と一緒に音を聴いて歌声が一人一人違うことをはっきり認識するところから始めてください。個別認識があいまいなうちに曲を聴いていると、なんだかみんな似たような顔や声質に聴こえるものです。勿論それだって、ざっと聴いている分には別段支障はないんですが、パートが激しく入れ替わるモーニング娘。の曲をより味わうためにも歌声が「違う」ことを認識しておくことは大きなプラスになるはずです。

さてそれでは「ハロー!プロジェクト2003夏 よっしゃ!びっくりサマー!!」を取り出してください。
これは、毎夏にハロープロジェクトのメンバーが一堂に会して行われるコンサートを収めたものです。シャボン玉のコンサート初披露はこのコンサートの時でした。
この映像を見てもわかるとおり、生で歌うライブではCDと同じにはなりません。音程を外したり、リズムがずれたりするいわゆる「キズ」も多くなるんですが、それよりも安倍さんの「シャボン玉ー」(実測1時間33分33秒から)の伸ばしの揺らし方や飯田さんの「苦労なんて覚悟してた」(実測1時間35分37秒から)のフルパワーの歌い上げなどCD録音時から進化した解釈こそが聴き所になるんです。譜面で要求されることをよりオーバーに演ることによって楽曲の本質に触れようとする。T君もやっているであろうことを彼女達がこの曲に対してどう取り組んでいるか。それが15人分です。聴き所は満載ですよ。

じゃあ、お次は「コンサートツアー2003 15人でNON STOP」
これは、2003年秋のモーニング娘。ツアーの模様を収めたものです。ここで見てほしいのは、歌っている人以外の人はなにをしているか、です。
答えは実にシンプルで踊っているわけです。まあ、それだけなら当たり前じゃないかと思われるかもしれないんですが、彼女達のダンスには何かしらの曲世界を構築する意味がつけられています。もちろんそんなフリの仔細について逐一解説しているものなどどこにもないので、そこは視聴者のこちら側で想像することが必要になります。例えば「結局女女だね」の部分(実測4分30秒から)では田中さんと新垣さんが視線を合わせた後互いにそらします。そして、新垣さんが振り返ったときにはもう田中さんとは二度と視線が会うことがない。もう二度と逢うことのない別れた二人を暗示していると私は解釈しています。まあ、あえてそんな意味づけをいちいちしなくても、石川さんのとんでもなく高いハイキック(実測4分51秒)や矢口さんのびょんびょん跳ねるステップ(実測5分8秒)、高橋さんの中段蹴りやフレーム下から映りこんでくるところのキレのよさ(実測5分59秒、6分7秒)なんかを見れば単純にこの人たちとんでもないことやってんな、と感じると思います。そう、歌っていない人たちもただのバックダンサーではなく曲を構成する重要な一員なのがモーニング娘。の曲なのです。

では、「ハロー!プロジェクト2004Winter C’MONダンスワールド」を取り出してください。まだまだありますよ。
これは、毎年お正月期間に行われるハロプロ全体でのコンサートを収録したものです。ここで見てほしいのは、まず、道重さんのセリフパート。冒頭の「なのに、どこいったんだよー!」(実測1時間18分23秒)とラスト「シャボン玉ー!」(実測1時間19分45秒)ここまでのコンサート音源ではリップシンク(いわゆる口パク)だったものがここでは生声になっています。これには勿論スタッフ側の任せても大丈夫といった判断が反映されているわけです。つまりは道重さんの成長が見られたわけですね。このように歌を歌いこんでいくなかでの成長、達成していく過程を追ってその人に共感を持って見ていくことも一つの見方です。さらに、ここで初出なのがもう一つ。「愛する人はあなただけー」のところにかぶさるように言われるファンの「れいなだけー!」の嬌声(実測1時間18分6秒)。これは現在に至るまで続いているいわばお決まりの合いの手といったものです。普段咳をするのも憚られるようなコンサートに行っているT君にとってはちょっとしたカルチャーショックかもしれませんが、こうした客席から発せられる声というのは曲ごとに様々なパターンを伴って存在します。まあ、こういうのは歌舞伎の掛け声と同じでよくわからない人が間の外れた調子でやると無粋になっちゃうんですな。T君がコンサート会場に行ったとき、おそらく周りはみんなやっているのでやらなきゃいけないかのような気になるかもしれませんが、よくわからない場合はやめておいたほうが無難でしょう。逆に周りでこんなに騒がれたら肝心の歌が聞こえないんじゃないかとも心配になるかと思いますが、その点はそれ以上にPAがガンガン鳴っているので意外と大丈夫です。むしろそんな声の防壁がないとPAの音圧にやられてしまうくらいです。

では、「モーニング娘。さくら組 さくら咲く」と「モーニング娘。おとめ組 おとめチック」今度は二枚です。
これはモーニング娘。が二組に分かれて全国を回ったツアーを収録したものです。二組に分かれているので、パートの異動がかなり大幅に行われています。
特にさくら組ではメインボーカルが加護さんになっていて曲全体の印象もだいぶ変わって聴こえると思います。田中さんなんかをはじめとしてこの曲は、がなる感じで激しさを表現する人が多い中、加護さんはファルセットを多用して曲の持つ世界を表現しようとしています。また、おとめ組ではステージ上そして会場中に伝播していく熱気を感じてください。殊に「待っていたって戻らない」の石川さん(実測51分52秒から)の何かに取り付かれたかのような姿は必見です。ベースラインがぶんぶん強調された録音もそんなただならぬ雰囲気作りに貢献しています。

さて、それでは「コンサートツアー2004春 The BEST of Japan」
これは分かれていた二組が一緒になって行ったツアーの様子を収録したものです。
ここまでT君は見所を探して画面を追い歌声に耳をそばだてていたと思いますが、この回では少し目先を変えて一人のひとだけをずうっと追ってみてみましょう。誰を見てましたか? 一人の動きをずっと追うことは全員を見ていたときとはまた違った発見があったと思います。拍車となって歌に推進力を与える田中さんのヴォーカル、カットのつなぎ目の音楽的に流れがちぐはぐになりがちなところを豪快なフリ一発で自分に引き込んだ辻さん、安倍さんが抜けたあとのパートを懸命に歌う紺野さん。人の数だけ見所がきっとあるはずです。もし、あなたの目をひきつけて離さない娘がいるとしたら、あなたはもうその娘のファンになってしまっているのです。

では、「The BEST of Japan 夏〜秋 ’04」
ここまで様々なDVDをごらんになってきた貴方ならお気づきのことと思いますが。このDVDでのパフォーマンスは熟成されて燃焼度がより高まっているように聴こえませんか。かように曲を歌いこむことによって自分のものにしていく、もちろんそれはマンネリの危険を常に孕んでもいるんですけれど、モーニング娘。に関してはメンバーの異動なんかもあって(勿論一回一回のパフォーマンスに全力投球する彼女達の姿勢もあって)その罠にははまりにくいということがあります。実はここのところが私にとってのモーニング娘。の魅力の大きな部分だったりもします。完成形ではない成長途上のダイナミズム、それ自身がエンターテインメントになる。このところがモーニング娘。を楽しむカギになるんじゃないかと思います。

では、最新のツアーのDVDを…。そう、最新のツアーのセットリストにはシャボン玉は含まれていないんですね。お気に入りの曲がない、これもまたよくあることでもあるんですがこれまでの「見方」を使って見ればきっとほかの曲も好きになると思います。

なに? そんなにDVDを買うお金がない? そりゃそうですよね。

まったく、ハロプロってのは金食い虫です。