駆け込み感想

申し上げます。申し上げます。旦那様。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かしておけねえ。
はい、はい。落ち着いて申し上げます。あの人。松浦亜弥のことです。スポフェスのサバイバルレース。始めはよかった。上手くいった。DVDでもきっちりと伏線を張ったバットグルグルで派手にこけて見せた。これぞ熟練。これが見所。クイズパートも独壇場。時事って何ですか? 時事って何ですか? 人間の耳は、いきなりのハイテンションセリフは聞き取り難い。だからこそ。さればこその繰り返し。記憶に刻み付ける、復唱。テンション上げるセリフに欠かせぬテクニック。亀井なんぞは問題外。話にならない。気分任せ。マイクを向けられれば、ひゃーひゃー、わーわー。それでは掴めぬ、ヲタ心。それでは値せぬのです、高評価。二問目は、不覚の予想外。咄嗟に浮かばぬハズしの回答。しかし、そんなものもなんのその。狙い通りの負け残り。ああ。なのに。あああ。
カメラフレームは、がっくり項垂れ肩落とす松浦捉える。目端でモニタの画。確認したその刹那の殺意たるや。如何ばかり。口惜しくも口惜しい。
あなたはこの気持ち、吾身可愛さから来るものとお思いなさるだろう。信じてもらえぬは百も承知で、敢えて申しあげる。千五百米。幾ばくも走らぬうちから横腹を押さえた私の所業、あなた様は計算高いと指弾するでしょう。我々は不幸。冷遇されているのです。ここスーパーアリーナのスポーツ祭典こそが。編集という名の恣意に満ち満ちた鋏で切り苛まれない、私のあまりに数少ない楽園なのです。否! 良曲を貰っている、推されている。そのようなおためごかしは聞き飽きた。総ては出来レース。本当にそうならば、何故、DOKYU!はリトルガッタスを取り上げないのか。ルールも怪しいラビッツにどれほどの枠が割かれたことか。新垣など一つ覚えのまゆげビーム。ならばマン毛ビームのほうがまだよかろう。何故! 何故! いや、よしましょう。愚痴は醜い。
おや? そのパネルは。はは。MIPとな。いや、お断りしましょう。殴られぬうちに引っ込めたらいいでしょう。商品欲しさに痩身に鞭打ち駆け回ったわけではないわ。引っ込めろ! いいえ。ごめんなさい。受け取りましょう。そうだ、私には腹を空かせた弟妹が大勢いるのだ。家に帰れば、哀れな小鳥のようにぴいぴい鳴くきょうだいたちがうずくまっているのだ。おお、そうだ。そのとおり。私は商品欲しさに、必死だった。開場間も無く跳び箱練習したのも、がっつくヲタ共、釘付けにする手練に他ならぬ。もっと視線を。もっと注目を。それが金になるのだ。は、ありがとうございます。いただきます。はい、はい、申し遅れました。私の名は、嗣永桃子。へっへ。ベリーズの桃子。