「SLAM DUNK」の名台詞で振り返る「SEXY8ビートツアー」

『オレはいつも寝る前にこの日を想像していた…』『一年のときからずっとだ』
吉澤さん卒業の日の前の夜、緊張しまくったわたしはこんな感じでした。娘の卒業に立ち会うのはこれで三回目ですが(他の二人は石川さん、紺野さん)今回はどの卒業よりも「行ってしまうんだ……」という感慨が強かったように思います。それはたぶん
『みんな…精神的にお前を頼りにしているんだ』
ということ。娘のメンバーはもちろんだけど、われわれファンの側にとっても吉澤さんは何かあったら大きく動揺が走ってしまうくらい土台の人だったと思います。思えば、かつてはその心情面のブレが結構はっきり見て取れた人だっただけにリーダーになってからの毅然さが余計に際立ってた気がする。そして、その頼もしさに大分甘えていたような気もするなあ。
『自分一人が初心者という状況でそれでもなんとかしようと』『いつも彼なりに必死に考えながらやってるんですよ』
今回のツアーで目に見えて激変して言ったのが光井さん。まあ、初めてのツアーなので当たり前といえば当たり前なんだけど、序盤のへろへろぶりを知っている者からすると、すごく成長したと思う。「出来る女」はわたしが見た名古屋市民会館あたりまでの中盤では、歌い出しが連戦連敗だったのに対し終盤では結構まとまった回も出てきた(ダメなときはやっぱめろめろだけど)。笑顔やトワイライトでは回ってくるワンフレーズでいかにインパクトを与えるかという娘歌唱の上での永遠のテーマにいろいろ工夫して挑戦しているのが見て取れた。声を買われて入ってきただけに、初めてのツアーにしてはパートも多くて大変だった部分も多かった気がするけれど、どうすればよくなるかを考えてる姿勢が見えたのが頼もしい。
『どんな天才にもミスはあるわよう!!』
春ちゃんが天才かどうかはさておいて(笑)名古屋市民会館での「未来の太陽」での小春ちゃんの落ち方は衝撃的でした。前のツアーで「落ちた」ときと全くおんなじだったんだけど、いっぱいいっぱいになって歌詞が飛んじゃうとかじゃなくてニッコニコで客席に向かって手を振ってたりするんですよね。で、モニタに抜かれて慌てて気がつく(笑)テレビジョンの対談でもいろいろ考えちゃって混乱すると語る光井さんに対して「楽しー!フゥー」ってなると答えていた考えのなさっぷりが遺憾なく発揮されてました。採るときにそこらへん考えたのかどうかしらないけど、この二人の対称さ加減はおもしろいね。
『お前と同じくらいガムシャラなんだ』
さて、話は一気に最終公演に飛んでしまうんですが、ここでガムシャラになっていたのがれいなちゃん。今ツアーではダンスの気合の乗り方でれいなちゃんはすごく印象に残っていたけど、最終日はそれに輪をかけてすごかった(あと、ガキさんの気合も)。シャニムニとかカラダがバラバラになっちゃうんじゃないかと思うくらいぶん回してた。浪漫のチェア!の掛け声なんかも異様に気合が入っているし。
『ディフェンスに最も必要なもの』『それは技術ではなく気持ち』
たぶんダンスに最も必要なものをコレなんじゃないかと、道重さんのダンスを見ていると思います。夜公演われわれの席はPA席のまん前というところでして、後ろには菅井先生や夏先生つんく氏などのお歴々が。そして花道ステージには恋愛レボリューションを踊る道重さん。「夏先生見ていますか?! さゆみちゃんがこんなに立派になっていますよ」それと、道重さんはお歌のときも過剰なくらい気持ちを入れ込んでる。ド・アップで連発されてるライブ映像でも確認できるのでぜひどうぞ。
『告白かと思ったぜ花道の野郎』
さて、そして吉澤さんへの卒業コメントです。スポーツ新聞、ブログ、ファンサイト、TV等等このコンサートについて触れるメディアで取り上げない人はいなかったガキさんの発言。まあ、ガキさんのマジヲタ魂真骨頂て感じですばらしかったです。いまどきあそこまで熱い人も少ないんじゃない、というくらい熱い。高橋さんが空気を読まないタイミングで突っ込んだように、言葉の裏を勘繰れば今のモーニングにネガティブな気持ちがあるんじゃないかなんて憶測もできるんだけど。あんなマジヲタな人の言葉の是非をどうこういうなんて野暮じゃない? あんな熱い魂の人が、娘のために頑張らないわけないんだからさ。で、個人的にガキさんの言葉よりもぐっと来たのが亀井さん。「いつもはてきとうだけど、吉澤さんを好きな気持ちはてきとうじゃありません」いい言葉だね。ほんとに告白かと思うよなあ。
『集中している時のあいつの動きは本当に』『常軌を逸している!!』
最終公演というのは誰でもそうだけど、気合や集中度がやっぱり違う。それがわたしがツアーの初日なんかよりラストに行きたいと考える理由なんですが、今回もすごかった。特にガキさんの集中力とパフォーマンスは半端じゃなかった。会場が大きくて人がいっぱいいるからテンションあがっちゃったのか、怪我した高橋さんの分まで頑張らなきゃと使命感に燃えたのか、吉澤さん卒業ということで気合が漲ったのか。ま、たぶんこれらの全部の要素が絡み合って生まれたものだと思うんですけどね。そしてなにより、その気合をきっちり受け止めるだけの技術的な土台があることがガキさんのすばらしさ。これがあるからこそハイパフォーマンスができるというものです。
『足は痛いはずだ……なのに…』
横須賀の昼で高橋さんが倒れた時はやっぱり衝撃でした。スタッフに担がれて運ばれていくときにはピクリとも動かなかった(ように見えた)ので、頭をよぎったのは怪我とかの外傷系よりはカラダの内側の問題でした。もしそうなら重篤なものにならざるを得ないわけで結果としては捻挫で済んでよかった、ともいえるんですが…とはいえその後の公演では一人だけフォーメーションから離れて歌うことを余儀なくされるわけです。怪我した直後の夜公演に病院から直行してステージに立ったことからもわかるとおり、彼女のステージにかける気持ちの強さは尋常じゃない。その彼女がステージで力を発揮できない状況を思うと卒業コメントでも触れていたとおり、相当悔しいんだろうなあと思うわけです。で、最終公演、やっぱり一人フォーメーションから外れて、MCでも走ったりジャンプしたりといった無理はできないと語っていた彼女。どうなのかなあ、と思ってみていると、一応最初のころはおとなしめな動きでしたが、会場のテンションと一緒にだんだんヒートアップ。トワイライトのころには冒頭のハイキック含めて普段と何も変わらないフリをしていました。とことこ歩きまわるし、「ここにいるぜぇ」ではおなじみのブレイクスルー回し蹴り(一応軸足は左)をばっちり決めてニッコニコ。ホントに足ケガしてんのってくらいでした。たぶん足はまだ痛いとは思うんですけど、気持ちが肉体を追い抜いた稀有な瞬間に立ち会えたのかもしれないですね。ただ、やっぱりスタッフには動きすぎだと怒られてたみたいです。卒業コメントでの号泣っぷり(れいなちゃんでさえ我慢しようとこらえていたのに!)とも併せて「自制の利かない愛ちゃん」の異名をとどろかせた場面でした。
『プレイでこれだけ人の心を動かすなんて』『涙出そうになってきた…』
今回の公演で「聴かせる」役割を一手に担っていたのが藤本さん。「幼なじみ」は娘に入ってからの彼女によく振られるようなガンガンに鳴らすような歌唱じゃない曲ですが、やっぱミキティはすごかった。藤本美貴という人の幅の広さ、技術の確かさを痛感しました。実際ちょっと泣きそうでした。

そしてすべてが終わった夜公演後、降り続いていた雨はいつの間にかあがっていました。あの山王戦のように。